Blood Smell
私に触れる寸前で先生の手は止まった

「大丈夫。

冴・・・
傷つけるようなことはしない・・・。」


私は先生の瞳を見つめる
優しい微笑が私を求める

「おいで。
俺のお姫様・・・。
その暖かい肌に触れさせてほしい。」

私の中で恐怖感が弾けた
その中から出てきたのは
「先生に触れられたい」という熱い想い

私のほうから先生の手を頬に擦りつけた

「抱きしめてもいい??」

先生が優しくささやく

私は静かに頷いた

本当は今すぐ先生の香りに包まれることを
何よりも望んでいる

そっと
でも少し強引に
それでも優しく
先生は私を包み込んだ

氷のように冷たい先生
服越しにもその冷たさが伝わる

でも
私にはそれが心地よくて仕方ない

先生の胸からは鼓動は感じられなかった
でも
息はしている
胸は動いてるから肺は機能しているんだと思う

「先生・・・
心臓の音聞こえない・・・?」


「・・・

ああ。
俺の心臓は・・・止まってる。

もう、150年近く動いてないよ・・・。」


私は先生の胸から顔を離して
先生を見上げる

少し悲しげに先生は微笑んで尋ねた
「気持ち悪いか?」

好きな人にこんな事を言わせてしまう
私は最低な恋人かもしれない

心が痛んだ

私は再度きつく先生を抱きしめる

「関係ない・・・。
私は先生が好きなんだもん。
心臓なんて・・・どうでもいいよ・・・。」


先生は少し強く私を抱きしめた
きっと本気で抱きしめられたら
私は粉々に砕け散るのかな・・・?

そんな事を考えながら過ごす夜も悪くないかも・・・
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