Blood Smell
先生は私から手を離した

「もう一度、冴が決めてくれ。俺の傍に居るのか。もう、俺はお前にとってただの怪物でしかないのか。」

今までのこと
先生の家族
エリザベス―…


恐怖で背中に悪寒が走った

先生は
私を愛してると言った

でも…



先生がヴァンパイアになった時でも同じように思ってくれる?


今この家は私以外全員がヴァンパイア…
そのなかで
私は狼に囲まれた羊


怖い…


先生が好き


今までそれだけで
先生の隣を歩いていた

でも、先生と付き合っていくってことは…自分の命を常に危険にさらすこと


私にそんな覚悟があるの?

先生は哀しげに微笑んだ
そして
ベランダに出ていく


「先生―…。

一つだけ答えてください。

先生が本来の姿で居るときも、私を愛してると言ってくれますか―…?」


立ち上がってガラス越しにベランダの先生に触れた


先生はそのまま本来の姿になった

禍々しい瞳に気配
そして
恐ろしい牙


「愛しているよ。冴―…。」


私は窓を開けて先生に近づいた

本来の姿の先生に触れるのは初めてだった


そっと
頬に触れる

そのまま両手で先生の顔を包んだ


何も変わらない


瞳を閉じればいつもと変わらない先生がいた


そして開けても


やっぱり目の前には

先生がいる



堪えていた涙が溢れ出した
「先生―…。
傍にいさせてください。」

私は先生の胸に飛び込んだ
しっかりとした腕と胸板が私を包み込む


「離さない。」


先生は牙が生えるその口で私に愛を囁いた



先生


私は


もう迷わない


私は
先生の傍にいるよ
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