人心は、木漏れ日に似る
ロビーからは、生徒がはしゃぐ声が聞こえてくる。

だが、海里とほのみがいる廊下は、誰も通る気配が無い。

静かな廊下で、ほのみは困ったように微笑んだ。


「ごめんね、海里君。
今、忙しかった?」


どうもほのみは、海里がたった1人で廊下をうろついているのを見つけて世話を焼いた、というわけではないらしい。

ならなぜ、他校の自分にわざわざ声をかけたのだろう、と疑念を抱きつつ、海里はほのみを横目で見る。


海里の真正面に立つほのみ。

まるで穴のような黒い瞳。

それを飽きることなく海里に向けながら、ほのみは口を開く。

「海里君、もうすぐ飯盒炊飯の時間だよね」

「……ああ」


……妙なことを頼まれる気がする。

早く会話を終わらせたくて、海里は上の空の返事をした。

ほのみの黒い瞳が、近付く。


「あのね、星園の子が1人、まだ帰って来てないらしくて!

一緒に探しに行こう!?」


意外な言葉。

海里は思わず、ほのみの顔を見返した。

「……はあ!?」



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