ただ今、政略結婚中!
チャペルの前でパパが待っていてくれる。


少し潤んだ目が寂しそう。


黒のタキシードを着ているせいか、白髪が目立つ頭を見て私は当初の目的を忘れかけていたことにハッとなった。


そうだ、パパやママ、社員たちの為に彼と結婚するんだ。


大きく深呼吸すると、パパに微笑んでみせる。


でも緊張で顔の筋肉がうまく動かない……きっと引きつった笑顔かもしれない。


「亜希、とってもきれいだよ」


愛娘を前に表情を崩す。


「ありがとう パパ」


差し出された腕に震える手を伸ばしてつかまる。


「では、ご準備はよろしいでしょうか?」


目頭が熱くなった時、進行係の男性の真っ白な手袋が目に入った。


口元を引き締めて進行係の男性に頷いた。





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