ただ今、政略結婚中!
隼人さんの肩越しにエステルを見ると、今にも泣きそうな表情をしていた。


ふたりはケンカしたの……?


ふたりの雰囲気に戸惑っていると、日本語ではっきりとエステルの声が響いた。


「あなたのせいよ!」


彼女は憎しみの目で私を見ていた。


私のせい……。


「隼人さん……彼女が……」


声をかけたけれど隼人さんはエステルの言葉に気にする風もなく、表情も変わっていない。


彼は黙ったまま玄関を出て、すぐ近くに停まっている4輪駆動車の助手席に私を乗せた。


運転席に座った隼人さんは、エンジンをかけステアリングを握る。


車がゆっくり動き始めた時、運転席側の窓がドンドンドンと叩かれた。


その音に驚いて見ると、エステルが立っていた。


けれど、止まることなく隼人さんはアクセルを踏んだ。


車内は息がつまるような沈黙が続き、私は気まずくて窓の外を見ていた。


こんなことになるのなら……行かなければ良かった……。


結局エステルから何も聞くことは出来なかった。


そして隼人さんに聞く勇気もなかった。


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