ただ今、政略結婚中!

新たな進展

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ひんやりと冷たいタオルを額に感じて目を開けた。


一瞬、どこにいるのか、なにをしていたのかわからなかった。


隼人さんが私の顔を覗き込むようにして見る。


「私……」


夢を見ていた?


ううん……違う、隼人さんは見覚えのあろYシャツのまま。


エステルの別荘で起こったことを思い出した。


夢だったらと思わずにはいられない出来事。


「また熱が出ている。医者を呼んだからすぐに楽になる」


「……大丈夫です。放っておいてください」


隼人さんのベッドに寝ていることが分かり、身体を起こした。


「起きるんじゃない、そこで寝ていろ」


起き上がったものの、眩暈に襲われて顔を顰める。


その途端、唇の端が傷んだ。


あぁ……そうだ……あの男に叩かれたんだ。



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