ただ今、政略結婚中!
誓いの言葉はすべてが偽りに聞こえた。


でも私たちの結婚式は始まったばかり。


これからパパたちが幸せになれるように、私は頑張るしかない。


私が本当に結婚式に来てほしい人は数えても10人ほどしかいない。


それなのに、両家の会社関係の出席者で大々的な結婚披露宴になってしまった。


心臓のドキドキはいつの間にか治まり、ひな壇にいても、どこか冷めた感じで自分の結婚式に参加している感覚だ。


隣を見てみると、彼は口元に笑みを浮かべて紫藤不動産の白髪のおじ様のスピーチを聞いている。


最初の方のスピーチだから、重役さんなのだろう。


真剣に聞かなければと思うのだけど、私には重役さんの言葉に集中できずにいる。


ふと、隼人さんの顔が動き、私と目が合う。


じっと見ていたこと、気づかれた?


途端に恥ずかしさを覚えたけれど、視線を逸らすことが出来ない。


彼は私に魅力的な笑みを向けた。


「食事をしながら聞いた方がいい。酒は?」


さっきと全く違う優しい声色。


魅力的になろうと思えば出来るんじゃないっ。









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