ただ今、政略結婚中!
車が走り出すと、隼人さんが口を開いた。


その言葉に私の開いた口が塞がらない。


「今なんて言いました?」


やっとのことでもう一度聞き返す。


「今夜の便で戻ると言ったんだ」


「……」


やっぱり聞き間違いじゃなかった……。


「……それで、どのくらいで帰って来るんですか?」


こんな会話、運転手さんに聞かれたくないけれどその点は心配なく、仕切りがされてあるので聞こえない。


「さあ?」


外国人の様に肩をすくめられ、様になっているけれど、貴方は外国人ですかっ?と突っ込みたくなる。


「さあって……」


彼は私をバカにしているの?


「大きなプロジェクトの最中で、今ニューヨークを離れることは出来ないんだ。今後のことはまた連絡する」


これが政略結婚というものなのだろうか。


私のことは全く無視だ。


夫婦になったのに、ないがしろにされてすごく悔しい。


そう考えて、目頭が熱くなった。


優しくしてくれたらこれから頑張れるのに……。


そう言いたかったけれど、愛し愛されて結婚したわけではない……だから、私から出た言葉は


「わかりました」


だった。


その言葉を言ったきり紫藤家に着くまで口を開かなかった。

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