ただ今、政略結婚中!
「話ってなんでしょうか?」


賑やかな声が少し遠のいた廊下に出ると、後ろをついて来ていたジョンに振り向き聞く。


「亜希さん、悪あがきは止めた方がいいですよ」


いきなりきつく言われて目を見張ってしまう。


「ジョン……?」


「エステルは本気です。脅しなんかではありません。別れなければ自叙伝はすぐに発売されますよ」


優しい微笑みを浮かべたいつものジョンではなかった。


瞳が冷たく、そっけない態度。


「脅しじゃないってことぐらいわかっています」


「……隼人さんは君のどこがいいのだろうね?」


ジョンは少し離れて立っていた私に一歩、二歩と近づいてくる。


ジョンの瞳が急にぎらぎらと異常な光を宿しているように見えて、怖くなりじりじりと下がる。



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