ただ今、政略結婚中!
「隼人さんにも理解に苦しむよ。ビーナスのようなエステルの身体と君の身体とでは雲泥の差だろうに」


「そんな話聞きたくありません。戻ります」


戻ろうと歩きはじめると、腕を掴まれ引き戻される。


「離して!」


「君の魅力を知りたいと思ってね。きっと、外見上ではわからない魅力があるのだろう」


「なにを言っているのかわかりません!離して!」


逃げようとする腕をぎゅっと掴まれ、ジョンの顔が近づいてくる。


「離して!」


強く言ってもジョンの手は私の両頬をつかんだまま緩まない。


「やめてっ!」


唇がもう少しの所で触れそうになった時、私は力を振り絞り、思いっきり彼の脛を蹴った。


「うっ!!」


鋭いヒールのつま先がジョンの脛を蹴ると彼は呻いた。


かなり痛いらしく、私の両頬を掴んでいた手を離し、蹴られた脛を抱え込んでいる。


その隙に私は足がもつれそうになりながら、隼人さんのいる場所へ戻った。


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