きみとぼくの、失われた時間


「年内に一、二度会うか会わないかって言ってたよ。一応親を思う気持ちはあるみたいだから、顔は出してるみたいだけど。
ちなみに聡さん、結婚して家庭を持ってるんだ。子供も二人いる」

「兄貴、結婚してるんだ。子供もいるって…、なんか信じられないな。パパしてるのか…。そっか、親と仲が悪くなってるのか」
 

居た堪れない罪悪感が襲ってくる。

家族が心配してくれているのは嬉しい、けど家庭内の仲が決壊しているなんて。

夫婦の次は親子か、しかも原因が次男。

元凶である俺は非常に居た堪れない気分になる。


俺がいなくならなければ親子関係は良好、とまではいかないけど、それなりの仲だったに違いないだろうに。


だけど俺がいなくなったから、父さんと母さんが離婚せずに済んだらしいし、スンゲェ複雑な気持ちだ。
 

決まり悪く鼻の頭を掻いて、吐息をつく。

2011年も良いことバッカじゃないな。
 

「聡さんには会ったらどうだ?」

遠藤の言葉に、

「いや驚かれるだろ」

15の俺が現れたら腰を抜かすって、俺は肩を竦めた。


幾ら血を分けた兄弟でも、ファンタジックに失踪した弟が、しかも15のままの弟が前触れもなく現れたら失神しかねない。


そりゃあ会いたくないって言ったら嘘になるけどさ。

いつまで此処にいられるかどうかも分かんないわけだし。


うんっと伸びをして小さな欠伸を零す。

やっべ、ホットミルク効果で眠くなってきたかも、俺。


元々俺の家は早寝だったしな。徹夜とかできないタチだよ。


子供の様子に一笑する遠藤は寝ていいと、大人らしい一言を放った。

「お前は?」「寝れないっつーの」だからこのまま夜を明かして会社に行くとか。どんだけタフだよ、お前。
 

なんとなく悔しかったから、俺も起きてると意思表明。



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