きみとぼくの、失われた時間


「ったく。俺だけ仲間はずれとか論外だろ。腹が立ったから、これからファミレスで奢らせる予定なんだ。お前も入ってるんだからな、健」

「ははっ。勘弁しろって」

「僕だけ奢らせるなんて酷くない? 坂本も行こうよ」


「いやこれからはちょっと」


俺は今日はもう無理だと遠慮した。


だって俺にはもう時間がない。
行きたいし、できることなら三人で駄弁りたいけど…、嗚呼…、こうして会話をしている間にも感じる、タイムリミットの砂時計。


もうのんびり2011年見学をしていることも儘ならない。

そろそろ行かなきゃ。


遠慮する俺に、永戸は共犯でしょっとぶう垂れた。

島津も俺に詫びろって煩い。
マジで勘弁しろって、苦笑いでその場を凌ぐ。



「そこにいるのは永戸に島津?」



此処で第三者が到来。
 
俺の背後に立つ第三者はどうやら二人の同級生らしい。

「久野じゃねえか」名前を聞いて、あの久野サンねっと俺は納得。


振り返れば、まさしくスポーツマンらしい短髪の髪を持った中坊が立っていた。

部活の帰りらしく、通学鞄の他に体操着らしき荷物を持っている。


あの鞄の中身はユニフォームかもしれない。

 
訝しげな眼で二人を見据える久野は何しているんだと肩を竦める。

お前には関係ないだろ、フンと鼻を鳴らす島津は腕を組んだ。


互いに火花を散らし合っている。

こりゃちょっとやそっとじゃ仲直りしそうになさそうだな。

永戸が決まり悪くするのも分かる気がする。


だけど大丈夫、お前等には時間がある。きっと仲直りできるさ。だから永戸、そんな顔するなって。

 
「永戸、今日欠席してただろう? なんで此処にいるんだよ」

「えー…、まあ、そこの友達と」
 

「友達?」眉をつり上げる久野に、「うっぜぇ」島津は行こうぜと永戸、そして俺に声を掛けてくる。

いや、マジで俺は行けないんだって。


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