きみとぼくの、失われた時間


「だってしょうがないじゃない、飲まないとやってらんないわよっ、ストレスの溜まる職なんだから! 坂本、あんたはなんで飲めないわけ?!
本当ならアラサーでしょ! あんたが一緒に飲んでくれたら、少しは私の飲む量が減ったわよ!」


「それ、チョー理不尽。生憎、俺は未成年だっつーの。教師が未成年に飲まそうとするなって。
なあ、二日酔いの薬、買ってるのか? あるなら用意してやるけど」

 
「ない!」ヤンヤンと大喝破してくる彼女は、行きに二日酔いの薬買わないと、と愚痴を零す。


次いで、俺に今後のために買っておいてくれないかと頼んできた。

他にもあれやこれやお使いを頼んでくる。


俺は吐息をついて、トーストを齧った。

そりゃべっつにいいけど、あんま俺、外を出歩けないんだぞ。


分かってるか?
ただでさえ平日の真昼間に中坊が出歩くのって目立つのに。


しかも秋本の奴、リビングに戻って来るやテーブルに置いているハンドバッグに物を詰めつつ、

「外にはあんまり出歩かないでよ」

しっかりと釘を刺してくる。


お前は俺に買出しに行って欲しいのか?

それとも家でおとなしくお留守番して欲しいのか?


どっちなんだよ。


デジタル時計に目を向けた秋本は悲鳴を上げて、ハンドバックを引っ掴む。

「じゃあ、行ってくるからね」

何かあったら連絡ちょうだい、矢継ぎ早に喋って玄関に走る秋本先生。

俺はテーブルに置いてあるスマートフォンに気付いて、「おいマジかよ」勘弁しろってと、食べかけのトーストを皿に置いてそれを引っ掴んだ。

ヒールを履いている秋本に、「忘れ物!」スマートフォンを見せ付ける。

いっけないと慌てて俺の手からスマートフォンを受け取り、行ってきますと手を振って扉を開けた。
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