あたしの彼は『ヒドイ男』
「もしかして?」
顔を覆ったメニューの横から、ぐいぐいのぞきこもうとしてくる広瀬くん。
きっと今の私、首も耳も手も、全部真っ赤になってると思う。
恥ずかしくて顔を隠したまま、ぶんぶんと頷くと、
「そっかー、おめでとうございます! カズさんついにプロポーズしたかぁ。長かったっすね」
と、広瀬くんが感慨深そうに言った。
「長かった?」
しみじみとつぶやかれたその言葉の意味が分からなくて、メニューから顔を上げる。
「どういう意味?」
きょとんとしながら広瀬くんを見上げると、にやにやと面白がるような顔でキッチンで料理を作るカズのことを見ていた。
「えり子ちゃんがはじめてこの店に来てから、もう二年半くらいだっけ? カズさんずっとえり子ちゃんにベタボレだったから」
「カズが私にベタボレって、嘘だぁ」
驚いて私が言うと、今度は広瀬くんがきょとんとした。