あたしの彼は『ヒドイ男』
 

「え、最初からカズさん、えり子ちゃんに惚れてたのに。気づいてなかったんですか?」

「まさか!」

最初から?

私がはじめてこのお店に来た時のことを思い出す。
酔っ払って具合が悪くなって吐いて、しかも勢いで告白しちゃうなんて、嫌われる要素はたくさんあるけど、惚れる要素なんてひとつもない。

「だって、お客さんが具合悪いからって、シェフがわざわざ介抱しないでしょ普通」

そう言われると、そうかもしれないけど。
広瀬くんの言葉に、私は考え込んでしまう。

「俺が具合悪そうなえり子ちゃんに気づいて、声をかけようとしたら、カズさん『俺が行くからいい』って俺を押しのけてさ。しかもいきなり女の子を抱き上げるとか、普通しないから。あれ、最初からカズさんえり子ちゃんに一目ぼれしてましたよ、絶対」

「ええ?」

< 67 / 74 >

この作品をシェア

pagetop