Tricksters2ッ
「阻止しないんですか? ユカリさんが、やめて、ってアイツに言えば、アイツはやめると思います」
ユカリさんは力なく笑った。ふんわりと柔らかく笑うところがユカリさんの最大の魅力だ。
「他の人の事だと口出ししちゃうし、ドラマとかなら食い入るように見ちゃうんだけど……自分の事になると駄目ね。私、わからない。いつも善太郎に振り回されてただけよ」
「アイツに振り回されて平気な、心が広い人間なかなかいませんよ。俺、何回ぶん殴ろうと思ったことか」
「ふふ、殴ってるじゃない。何回か」
「ああ、そうでした?」
「ふふふ、ありがとう。でも、ごめんなさい。私、実は淳一くんに一つ隠し事してる」
「隠し事? なんですか?」
「でも、私からは言えないわ。淳一くんを信じてみたいのよ……そうしたら善太郎のことも信じられそうだから」
な、なんだ? それ!
隠し事?
ゼンの過去についてか?
なんだ? なんなんだ?
「ふふふ、マンションに着いたわよ。降りましょう」