Tricksters2ッ
全国二十店舗閉店

────ゼンのいなくなったトリックスターズに出社する。
 
 雲はどんよりと厚く、今にも雨が降りそうだ。

 こういう天気、嫌いだ。降るのか、降らないのかはっきりしろよ、って叫びたくなる。


「ミエちゃん、おはよう」


 受付を通り抜けようとしたら、ミエちゃんが人差し指一本をクイクイと動かし俺を呼んでいる。


「真部所長代理、今日はまだゼン所長がお見えになってませんが?」


 ミエちゃんの女王様ぶりは健在だ。


「ゼンなら、逮捕された。結婚も白紙になるかもな」


「た、たたたた逮捕?」


 ミエちゃんはガタンと椅子を倒して俺の胸ぐらを掴んだ。


「私、あなたに結婚の邪魔しろって言ったけど逮捕させろなんて命令してないわよ!」



「俺だって、まさか逮捕されるなんて思ってなかったし……しばらく来ないみたいだよ。アイツ」


「どこの留置場にいるんですかっ!?」


「さあ? ……どこだろう」


「チッ、使えない男」


 舌打ちですかーっ?
 マジで?


「私、今日からしばらく有給休暇をとらせていただきます。サヨウナラ」


「え、ミエちゃん?」



「気安く呼ばないで! サヨウナラ!」



「待って……」


 ミエちゃんは小さなショルダーバックを肩にかけると、ピンヒールをカツカツならしてロビーを横切りビルから出ていった。



 参ったなぁ……


< 174 / 359 >

この作品をシェア

pagetop