Tricksters2ッ
「あっ、もうこんな時間だ。私帰らなきゃ」
「え? 帰ってくれるのか?」
「帰るわよ。私、仕事があるし。淳一みたいに暇じゃないの」
俺って、そんなに暇そうに見えますか?
藍莉はびっくりっぱこを片手に立ち上がると、俺のスーツの胸ポケットに入れていた薄型のスマートフォンを抜き取った。
「なにすんだよ! 返せ」
「嫌よ。私のフィアンセ逃げたままじゃない。淳一が責任とって私を結婚させてくれるんでしょ? 番号教えて」
嫌だな……。藍莉に携帯番号なんて知られたら、四六時中俺に安堵する隙を与えなさそうだ。
奪い返そうと手を伸ばす。藍莉はくるりとターンして避けた。
意外と身軽で俊敏な動きだ。
もう一度、手を伸ばすと、その手を掴まれて、ゴスロリクッションに投げ飛ばされた。
コイツ、ただ者じゃない……
俺を投げ飛ばしたぞ?