冷蔵庫の穴

14

冷凍庫の扉を
15センチほど開けたまま
地球儀を両手で持ち上げて
壁へ入れてみる。

な、無い。

やはり無い。

あたしは地球儀を抱えている。

それなのに
扉の内側からは地球儀が見えない。

腕をこちらへ引けば地球儀は見える。
そして、
手から離してみた。

無い。

冷凍庫にあるはずの地球儀が無い。
どこへ行ってしまったんだ、
あたしの地球儀。

尋常ではない。
してはいけない事をしているのか。
しかしあたしは体験している。
あり得ない事を目の当たりにしている。

そんなことより、
この地球儀は
おじいちゃんから貰った

大切な宝物、

よりにもよって
なんで地球儀入れちゃったんだろう。

馬鹿だ馬鹿だ!

慌ててあたしは踏み台に載り、
右腕を肩まで突っ込んで
めくら滅法辺りをまさぐった。

下の方で指先に何か触れた、

地球儀かな?

真上から丸い部分を
掴むつもりで指を広げた。

ゆっくり指をすぼめる。
期待とは裏腹に

紙の様な物を
5本の指で挟んだ。

躊躇はせずに引き上げてみる、
そんなに重くはなく
苦もなくそれは取り出せた。
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