冷蔵庫の穴

19

彼女も

あたし同様、

温もりを求めているはず。


自分を愛せないまま

日々を過ごしているのだ。


この一件が起きてから

あたしは

『虚』

という存在に

親近感を抱き始めていた。

それは、

彼女の

そして

自分の心に宿る


『虚』


が具現化されたもの
なのかもしれない。


あたしは目を閉じ

全神経を集中させ、

そっと彼女と鼓動を重ねる。


あるだけのエネルギーで、

間違いのない

自分を守るように。


決めた。


会う必要はない。

会った所でそれは自分なのだ。


あたしはなんだか

清々しい気分で

平面世界を後にした。


部屋の匂いが温かい。

ここがあたしの居場所なんだ。


< 19 / 20 >

この作品をシェア

pagetop