冷蔵庫の穴

面接の先生方と向き合う形で
あたしは座った。

一礼をして顔を上げると、
全員何とも言えない
いぶかしんだ表情で、
あたしを見つめる。

困ったあたしに
気付いたのか、
左から二番目に
座っていた先生が

「転んじゃったのかな??」

とあたしの顔を覗き込む。

不意を突かれたあたしは、

「へっ?!」

と答えてしまった。

ご存知の通り面接は、
決まりきった会話を
無事にすり抜けた人の勝ち。
はなっからトチクリあげた
あたしである。

ましてやあたしは

吃音持ちで、

焦れば焦る程、
悪循環が起こる。

初めの問答は
無かった事として
気を取り直し、
質疑応答は進んで行く。

何かの質問に困り、
ふと、
瞼に触れると、
「転んじゃったのかな??」
の意味を
指先で理解してしまった。

糊で作った

自己流アイプチは

走った汗で溶解し、

舞った砂埃を吸着し、

瞼に

砂のアーチを

描いていたのだ。

そうしてあたしは

第二志望の高校に入学した。
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