冷蔵庫の穴

目眩にも似た混乱があたしを襲った。

冷蔵庫から逃げるように
駅前のスターバックスへ駆け込み
コーヒーを飲みながら
気を落ち着かせようとした。

ソファに深々と座り深呼吸をしてみた。

気付けば
頭にタオルを捲いたままだった。

コーヒーが痺れたあたしの脳味噌を
徐々にではあるが解きほぐしていく。

今起きている事態を
俯瞰して見てみよう。


えっと、、

ありふれたアパートで、

ありふれた冷蔵庫を、

ありふれた住人が、

ありふれたシール糊を剥がした故、

ありふれた

『虚』

を発見した。

んんっ?

ありふれてるのかなぁ。

もしこの事が本当なら
後ろに座ってるお客や
若い店員さんに、

「お宅の冷蔵庫に『虚』あります?」

と聞いても平気かもしれない。

いやいや、
そんな事はない。

これは親や姉にも言える話じゃないし、
他人に言おうもんなら
忽ち精神病患者扱いに決まってる。

しかし、事実なんだ。
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