泣かない家族

繰り上げ法要が終わってようやく家に帰ってきた。


母は水色の小さな箱になって我が家へ戻ってこれた。


遺影も照れ笑いだったはずなのに何だか泣き笑いの様に見えてくる。


遺骨の置かれた祭壇の前でボーっと座っていた。


「ハル、お前少し寝たら?オレも夜には帰るけど、夜まで寝た方がいいよ」


兄に言われてそういえばあたしはずっと寝てなくて病院の薬さえ飲むのも忘れていた事に気が付いた。


「ちょっと寝てみようかな・・・」


部屋に戻って家着に着替えて薬を飲んでベッドに入った。


母は本当に死んだのだろうか?


夜まで寝て、また付き添いでがんセンターに行かなきゃいけないんじゃないんだろうか?



「面会終了が8時だから7時までに起きればいいかな・・・」


目覚ましをセットしてベッドに横になる。


いや、違う。もう病院へ行く必要はないんだ。


目覚ましを解除して横になるとウトウトと眠りについた。


寝たのは5日振りだと思う。
< 190 / 203 >

この作品をシェア

pagetop