泣かない家族

母とココロの誕生日はココロに合わせるから母の誕生日を繰り上げてやっていた。

ケーキに火を点けて母がココロを抱いてそれを写真に撮る。

火が怖いのかココロの顔はいつも横向きだった。


母はココロのために薄味の料理を作って、ウインナーで犬の肉球を表したり結構凝った事をしてそれも写真に撮っていた。

それから日付を入れてココロを写真に撮る。


毎年の行事がこれだった。


還暦は特別だけど、既にココロと一緒に誕生日はしている。


27日は割と普通の食事が並ぶ。


母は和室に並べたアレンジとアレンジの前に飾ったあたしの電報を何度も見に行った。


戻ってくると笑顔で「素敵だねー」と言っていた。

その位、お祝いされた事が嬉しかったらしい。



「もう60歳か、50代は大変だったけど60代はガンもあるし、もっと自分の為に生きてみようかな」


「そうしたら?安定したら妹と4人で旅行行くとかさ」


「娘と2人ってのもいいかな?ダメ?」


「ダメじゃないけど、その前にお父さんと行けばいいじゃん。ココロ見ててあげるから2人で旅行なんてした事ないでしょ?」


我が家は家族旅行をした事がない家。兄が結婚したから4人だけの旅行は永久にない。

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