泣かない家族

兄はフリーで不動産の会社に所属していたけど、母の転移がわかってから完全に仕事を休業していた。


あたしが病院へ行くと、偶然兄に会った。

病院で兄に会うのは初めてで久し振りだった。

あたし達は友達の様に仲がいい兄妹だ。


「2人揃うって初めてだね」


息苦しくなった母は鼻からの酸素を付けていてあたし達を見て笑顔になった。


「本当だね、アンタさ目が真っ赤だけど大丈夫なの?」


兄の目はウサギみたいに真っ赤だった。


「調べものしてるから目が疲れるんだ」


「お母さんの免疫療法とセカンド・オピニオンを探してくれてるんだよ。この病院何もしてくれないからお兄ちゃんが探してくれてるんだって」


「へー、見つかればいいね」


なかなか母を受け入れてくれないのは知ってるけど、母にはわからない様に普通に言った。


「まぁ、なかなかやってる病院がなくてね。でも札幌なんだから必ずあるよ。ここは田舎じゃないんだから」


兄は母に笑顔で言った。

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