綺麗な百合にも棘がある
祖母は犯人たち生徒をすぐにでも逮捕してもらうと言ったが、両親は家の名前に傷が付くと、躊躇った。

自分の浅はかな言葉のせいで夏妃が侵されたと知った春緋はただ立ち尽くすだけだった。

その日、春緋は夏妃との約束を忘れて、滝川と遊びに行ってしまっていた。

「なっちゃんゴメン…オレが悪いんだ」

「そう。あんたが悪いに決まってるでしょ。他に悪い奴、誰かいんの?」


春緋の顔が泣きそうに歪んだ。ゾクゾクした。

「オレ、なっちゃんの言うこと何でも聞くから…」

「何もしなくても良いよ。だって何も出来ないじゃない。大概のことは私の方が出来てるしね」

春緋はなんとか夏妃との関わりを持とうとしたが夏妃はそれを拒否した。

夏妃が自分の性質を理解したときはこのすぐ後だった。

学校側も加害者の親たちも、加害者にも未来はあると、夏妃に訴えを取下げて貰おうと、あの手この手で訴えてきた。

許せるわけもなく、夏妃は一言、言い放った。

「人をレイプして、妊娠するかもしれない恐怖を味合わせておいて、未来のことをまだ気にするの?加害者に未来なんてあるわけないでしょ。あなた達の生徒と息子は一生犯罪者よ。幸せになんかさせない。幸せを感じちゃいけないの」

親たちが絶望した顔を見た時に、夏妃は強い快楽を覚えた。

その時、自分がサディスティックな性質があると理解した。

ぞくぞくと背筋に快楽を駆け抜けた。

大人たちの驚愕の顔、春緋たちの恐怖に染まる顔、この顔を見続けたいと被害届を出さないかわりと非情な条件を突きつけた。

今も保護者たちは条件を取り下げて欲しいと自分にすがってくるが、夏妃は鼻で笑い弁護士に連絡してお引き取り願っている。
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