透明水彩

「後悔なんてしない…っていうか、する理由がない。何よ、湊のくせに偉そうに!」


そう、あたしは後悔なんてしない。
第一、あたしはまだ、莱を好きになってもいない。
そう自分に言い聞かせるように、何度も繰り返した。

あたしは莱を好きになってはいない。
否、好きになってはいけないのだ、と。


「……朝から、騒々しい。」

「あ、理人さん。おはようっす。」


…――そうだよ。
湊が言うことはありえない。
だから深く、考える必要もない。


「理人さん、今日も偵察っすか?」

「ああ。何だかここ最近、向こうの動きが怪しいんだ。」


所詮、あたしと莱では住む世界が違う。
だから、もし好きになったとしたって仕方ないでしょ?

だってあたしはいつか、間違いなくこの時代から自分の時代に戻らなければいけない。

別れは必ず、訪れるのだから。





 ― Chapter.2 * END ―
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