透明水彩

ありえない時空を超えた存在は、多くの矛盾を生むことは否めない。
そしてそれによって生じた矛盾は、きっと、間違い無く時空を捩曲げてしまう。

何となく、わかってはいた。
想像ができなかった訳ではない。

けれど、いつか必ず訪れる別れを思うと、掴みきれない虚しさが胸を覆い尽くした。

残りは約、1ヶ月。
その間、あたしに何ができるだろう。
してもらうばかりじゃなくて、みんなに何か、してあげられる?

そんなとき、不意に脳裏を過ぎったのは莱のこと。そういえばあたし、あの緊急召集がかかった日からしばらく莱と顔を合わせていない。

あの日最後に見た、悔しそうな悲しそうな表情を鮮明に思い出し、何だか苦しくなった。

けれど、ふと思う。
これ以上あたしは、莱に関わらないほうがいいんじゃないのか、と。
あたしが莱に対して、普通以上の気持ちを抱いてるだろうことは明らかで、湊も理人も気づいてる。

でも必ず、別れはやってくるから。
これ以上気持ちが大きくなるのが、好きだと認識するのが、怖い。

もやもやする気持ちをどうにもできないまま、左手のリングを強く握りしめた。





 ― Chapter.3 * END ―
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