透明水彩

…――そして、


「美凪、サン……?」

「な、に?」

「俺、美凪サンが、好き、です。」


不意に紡がれた言葉に、一瞬頭の中が真っ白になった。

だって、何?
莱が、あたしを好き?


「……何、言ってるの?」

「そのままの意味、ですよー。
俺が、この時代の美凪サンに、抱いていた気持ちが憧れなら、今の美凪サンに抱いているのは、間違いなく、恋愛的な、気持ち、なんです。」


信じられなかった。どうしても。

だって、必ず別れが来ることくらい、莱だってわかってるはずなのに。
いつか必ず終わる、そんな関係なのに。


「だからこそ、2年前、守れなかった分、今の美凪サンを、守りたかった。」


そう言って莱は、また優しく微笑む。
ぎゅっと胸が締め付けられるような気がして、未だ頬に触れる莱の手に自分の手を重ねた。
< 210 / 279 >

この作品をシェア

pagetop