透明水彩

「莱……、」

「好き、です。美凪サン。……たとえ、いつか必ず、別れなくちゃいけなくなったと、しても。」

「……っ!」


あたしの言葉を遮るように、はっきりと紡がれた莱の言葉は、あまりにも真剣さが溢れ、ある種の覚悟を秘めているようだった。

だって莱は、全てを理解して受け止めた上で、あたしに気持ちを伝えてくれた。間違いない別れを、覚悟した上で……。


「…――あたしも、莱が好き。」


だからこそ紡いだ、あたしの気持ち。心の奥底にしまい込もうとしていたのを引っ張り出し、莱の瞳を真っすぐ見つめて、ただそう言った。

刹那、柔らかく緩んだ莱の表情。照れたようにはにかみ、口を開く。


「……そんなの、とーぜんですー。」


相変わらずな態度も、きっと、莱が見た目以上に元気だからなのだろう。涙の跡もそのままに、2人目を合わせて微笑んだ。

嬉しかった。莱があたしを想ってくれて。
そして何より、元気そうに笑ってくれて。

だけどあたし達は、決して許されない恋をした。
どんなにお互いを想っても、叶うことはない。

越えられない壁が立ち塞がり、必ず別れが訪れる、悲しく儚い両想いだった。





 ― Chapter.4 * END ―
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