透明水彩
「おい、ナギ。そんな顔してんじゃねーよ。やっと向こうに、戻れるんだぜ?」
「そうだよ美凪ちゃん。君の時代には君の時代の、君を待っててくれている人がいるんだよ。」
湊の言葉も、叔父さんの言葉も、もっともだとは思う。
この未来で起きたことは知らないとしても、あたしの時代の叔父さんも、理人も、藍香も、ケイも。生意気な湊だって、みんながあたしの傍に居てくれるのだから。
でも………
「っ!おい莱っ!てめ、どこ行くんだよ!?」
湊の制止を振り切り、急に部屋を出ていった莱。
バタン、とドアが閉まる音が、無情に響く。
「……ったく。何だってんだ?アイツ……」
でも、そうなんだよね。
時代が変わっても、みんなは傍に居るけれど。
この時代で出会った莱とは、もう、会えない。
たとえ出会えたとしても、莱はあたしのことを知らない。
あたしのことを好きだと、そう言ってくれたこの時代の莱には、もう、永久に会えなくなる。