灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



足早に出て行く背中を見届けて、
静かにドアは閉まった。



今度は五千万……?
そんな大金を動かしてるの?
一体何者……?



すぐに戻ると言ったけど、
朝早くに出掛けたきり
夕方になっても戻っては来なかった。



待つのは得意じゃない。
頭がおかしくなる。
独りになると、腕の傷が疼き出す。
しきりに傷を増やしたくなる。



どうしようもない病気だ。
治らない病気。
あたしは一生これを繰り返す。



指先が小刻みに震え出し
思考回路が停止する。



独りは嫌なの……
独りになりたくない……
独りにしないで……



ペン立てに立ててある
カッターナイフに手が伸びた瞬間、
キーンと耳鳴りが生じた。



弱い音から徐々に太く大きくなる。
顔が歪むほどの耳鳴りに耳を塞ぐ。
それは遠くで鳴ったり
近くで鳴ったり
なかなかあたしを解放してくれない。



耳鳴りの向こう側でサイレンの音が
聞こえる。
それは救急車であったり、
パトカーでもあった。











< 124 / 300 >

この作品をシェア

pagetop