灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
7. 錆びついた瞳



ふわふわと眠りから覚める朝。
誰かの怒鳴り声らしき音で
目が覚めた。



部屋を出て廊下に出てみると、
郷田の部屋のドアが半分開いている。



手の痛みでのた打ち回ってるのかと
思い、早足で部屋に近付いてみると
どうやらそんな空気ではないと感じた。



誰かと携帯で話している様子。



『馬鹿やろう!お前何考えてんだ?
 五千万だぞ?そんな契約逃すのか!
 …ったくふざけるな。先方には俺
 から電話入れておく。今から向か
 うから書類揃えて待ってろ。』



郷田はそれだけ言って乱暴に
携帯を切った。
大きな溜め息をついて
上着に手を伸ばす。



部屋を出てきたところで
あたしと目が合った。



『あ…悪い。起こしちゃったか。』



器用に上着に袖を通しながら
顔を歪めた。



『郷田……あんた何してんの?』



『え?何が?ていうか悪いな。
 ちょっと野暮用で急いでるんだ。
 すぐに戻るから大人しく待って
 てくれよな。』



聞きたいことがいくつもあったのに、
前髪にキスを落とされたら何も
言えなくなる。









< 123 / 300 >

この作品をシェア

pagetop