灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~

~冷たい花~




少しずつ、僅かではあるけど
ゆらに笑みが出てきた。
どんな顔してるか知ってる?
きゅう…んと胸が締めつけられて
全てが平和になるんだよ。



その瞬間は
過去なんてキレイに消える。
まるで世界は二人だけのよう。
こんな世界をずっと夢見てきた。



わかってる。
ゆらは脱走者だ。
いずれ檻の中に連れ戻される。
おそらく無期限の処分だろう。
芋づる式に俺も……。



避けられないのか……?



いっそ誰も二人を知らない国で
生活できたなら……。



もう離れたくない。



ダメだとわかっていながら
正常な道に戻してあげられないんだ。
失うことが怖くてたまらない。



見つかるわけにはいかない。



だけどお前は、
人を信じられないが故に
俺から離れようとする。
時折高鳴る苦痛の叫びは
歯痒くて仕方ない。










< 220 / 300 >

この作品をシェア

pagetop