スターの結婚
悠果里は携帯を閉じて机の上に置いた。


イルカのストラップがやけに目につく。


公平がグアムで買ってきてくれたものだ。


付き合ってはじめて公平から貰ったプレゼントがこのイルカのストラップだった。


ストラップをじっと見ていると悠果里の目に涙が溢れてきた。


思い出したくもないのに5年前の思い出がよみがえってくる。


照れ屋の公平はなかなか悠果里にお土産を買ってきたことを言いだせず、悠果里のポケットにこっそりストラップを入れていたのだ。


「公平のば〜か。」


悠果里がそう言った時、楽屋のドアがノックされた。


「はい!」


悠果里はすぐに涙を拭って返事した。


沙織里はまだスタッフに挨拶回り中で楽屋にはいない。


「公平だけど...」


ドアの外にいるのは公平だった。


悠果里にとっては久しぶりに聞く公平の声がやけに心に響いた。


世間では『理想の男性声』なんて言われている公平の低い声。


ドアノブに近づくが、それを回す勇気はない。


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