- π PI -【BL】


一気に色んなことがありすぎて、俺は目の前がまさに真っ暗―――


眩暈がして、今にもぶっ倒れそうだった。


周りの社員からはひそひそと探るような話し声が聞こえる。


俺は慌てて手を振り、立ち上がった。


「いえ…俺、横領なんてしてないです…」


なんて間抜けに、それでも何とか答えると、周はふっと苦笑をもらした。


見慣れてる筈の笑顔なのに―――それは俺の知らない笑い方だった。





「いえ。横領の主犯は経理部の守川。そしてあなたの隣の部署の宮下 比奈、この二人です。あなたは知らない間に巻き込まれたようですが、一応事情を伺いたいのでね」




比奈が―――横領…………


それも守川と………!?





隣の部署を見ると、いつも比奈が座っている席に彼女の姿はなかった。







ただでさえぶっ飛んだことを言われ、そのうえ


“あなた”??“です”?だと……?


俺は周がこんな風に俺に喋ってるのをはじめて聞いた。


そんな混乱をよそに、年配の刑事が周に耳打ちするようにこいつの耳でささやいた。


「橘警視………」


話の内容こそ聞き取れないものの、“警視”って結構偉い立場なんじゃないの………?


って言うか、いつももっと変態っぽいのに、何でそんないかにもデキそうなエリート刑事気取ってんだよ…





それは俺の知らない―――周だった。






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