ごく普通の女子高生が、暴走族のお気に入りになって恋しちゃった話

私のパパとママは、５年前に交通事故で死んじゃったの。って言っても、パパとママは悪くないんだ。酔った人の運転していた車をよけようとして、高速道路から落ちちゃったんだ。

それで、その車に私も乗っていて、この首の傷はその時についたもの。それから、私はおばさんの家に引き取られたんだけど、虐待されてたんだ。だから、中学２年生のときにおばさんの家から出た。そして、もとの家で一人暮らししている。

「知ってるの・・・？」

「やっぱり。君、大沼　海乃莉でしょ」

なんで知ってるんだ・・・。

「５年前の事故の加害者の名前、覚えてる？」

そんなの、覚えてる。忘れられるわけがないもの。

「木島　東吾《きじま　とうご》・・・・」

「うん・・・俺、木島　啓吾《きじま　けいご》その人、俺の親なんだ」

え？

視界が、真っ暗になった。

今、目の前にいる人が、パパとママを殺した人の子供？

「・・・かえして・・・・パパとママ、かえしてよっ！」

「・・・」

その人は、一瞬だけ顔を歪ませた。つらそうな、そんな顔をした。

「あの・・・ゴメン・・・・言い過ぎたよね」

「いいよ、なんて言ったって。俺さ、虐待受けてたんだよ。親父に」

虐待・・・。

「母さんとも、仲が良くなかったし。そんな中この事故。俺さ、生きてる意味あるんかなぁ・・・って、本気で思ったよ」

・・・・。

もう、見てられない。

「つらかったよね。あのね・・・私も、虐待受けたの。すっごくつらいんだよね。義理の親だよしても、愛されないのって、すごくつらいんだよね」

気が付くと、私は啓吾を抱きしめていた。

「・・・・純弥が彼氏なんだろ。こんなことしちゃだめだよ」

「あ・・・うん、ゴメン、迷惑だよね・・・・」

私がはなれた瞬間、

「やっぱ、前言撤回・・・・」

えっ？

・・・・。

あの・・・私、抱きしめられてませんか？