ガリ勉くんに愛の手を

～佐奈の気持ち②～

見かけによらず、こんな強引なところあったんや…

うちホンマにどうしよう。

ベンは、いつもと顔つきが変わってるし、なんか、カッコよく見えて……

もう、半分どうにでもなれって感じ……


入口を入ると、すぐに階段がある。

そこでベンは足を止めた。

ロビーに中年の男と若い女が腕を組んでパネルの前に立っている。

（部屋選びやな？もう、どこでもええやん。
後が詰まってるんやから、さっさと決めたらええのに…）

うちは、のろいのが大嫌い。

なんでもパッパと決めてしまう。

まぁ、その性格がたまに裏目に出る時もあるけど。

色々考えているうちに、さっきの男女がエレベータに乗り、上へと上がって行った。

（あの、エリートっぽいおっちゃん、なかなかやるな～。

あれは、どう見ても不倫やで。）

ドラマの見すぎ？！

いや、うちの推理は正しいはず。

長年ミナミで働いてたら、お客の顔見てだいたいの事はわかる。

ところで、ここまで来たんはいいけど、ベンはずっと立ったまま…

全く反応がない。

（やっぱり、めちゃ緊張してるんやわ。
　かわいい！）

うちにはこの時、ベンの気持ちなんて全くわかってなかった。

そして、あの人がベンの父親って事も……