ガリ勉くんに愛の手を

【たこ萬】に着いた時、おじさんは一人で仕込みをしていた。

「こんばんは。
おっちゃん、佐奈さんは？」

「……。」

おじさんは何も答えようとしない。

「あの、おっちゃん？
佐奈さんは買い物？」

「もう…
おらん。」

（え？）

「もう、ここへは来えへん。」

（何を言ってるの？）

「おっちゃん！
佐奈さんはどこへ行ったんですか？！」

「東京や。
佐奈は、健二と一緒に東京に行った。」

おじさん…今、なんて…？

（…東京？
　どうして…？）

…冗談だよね、おじさん。

僕をからかっているんだよね。

ウソだと、笑い飛ばしてよ。


おじさんは僕を真っ直ぐ見るとその場で膝まづいた。

「ベン、すまん！
俺には佐奈を止める事は出けへんかった。

佐奈がそれで幸せになれるんやったらそのまま行かせて…」

「いやだーっ！」

（ベン？！）

「そんなのいやだ。
絶対行かせない…」

「ベン、もう遅いんや。
佐奈はもう行ってしまった。」

「おっちゃん、なんですぐに言ってくれなかったの？
僕の気持ち知ってて、なんで？！」

「ホンマに、すまん…。」