ガリ勉くんに愛の手を
♪ターンタータタン…♪

急に六甲おろしの着うたが流れた。

その瞬間、まりや近くにいた人々が佐奈を物珍しそうにジロジロと見ている。

(何?なんでそんな顔でうちを見るん?!)

「佐奈さん、ここは大阪じゃないんですよ。

なんですか?その曲は?

曲変えた方がいいですよ。」

(そうや、ここは大阪違うんや。
でも、そんなの関係ないわ。

うちはずっと阪神ファンやから!)

そう言いきって堂々と電話に出た。

「もしもし。」

「おう、佐奈か?
俺やけど何か買った?」

「ううん。別に欲しいものないし…」

「遠慮したらあかんで。
俺はもう昔の俺じゃないからな。

佐奈には贅沢させてあげたいねん。」

(気持ちだけで十分うれしいよ。)

「なぁ健二、今日は来てくれる?」

「うーん、今日はちょっと…
明日夕方行くわ。」

「ホンマ?!
じゃ、うちご馳走準備して待ってるから!」

「ホンマか?!
佐奈の手料理食べるの久し振りやな。
期待してるで。」

「うん。」

(健二の声を聞くとほっとする。

東京という大都会でポツリ取り残されてる気がして…

目に見えない孤独感がうちを不安にさせる。

健二、ずっとそばにいてや。)

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