ガリ勉くんに愛の手を
「勉君の事が気に入らないの?」

「あゆ美も知っていると思うけど、今回の主役候補はほぼ決まっているのよ。」

「緒方 健二?」

「そう。どう見ても最初から勝ち目はないわ。
出ても無駄よ。」

あゆ美はちあきの言葉を聞いて怒るよりもがっかりしたようだ。

「ちあき…
あなた相変わらず上辺しか見ていないのね。」

ちあきの表情が急に厳しくなった。

「確かに私から見ても今の勉君じゃ健二には勝てないと思うわ。
健二って子は顔も良いし、背も高いし、演技もうまいし。

でもね、出来上がったものはそれ以上にはならないのよ。」

(出来上がったもの?)

「緒方健二はすでに出来上がっている。
だからこれ以上伸びないって事よ。」

ちあきはあゆ美の鋭い観察力を素直に認めたくなかった。

「じゃ、あなたが連れてきた勉君はどうなの?
私には才能があるように見えないけど。」

「勉君は健二とは違う。
あの子は健二にないものを持っているわ。」

「ないもの?」

「そう、無限大の可能性よ。」

「可能性?
あと1か月でどうやってその可能性を引き出すの?」

あゆ美もちあきに向かってはっきりと断言したものの正直時間がない事は認めざるを得なかった。
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