ガリ勉くんに愛の手を
「あなたが勉君?」

「は、はい。」

(だめだ、緊張してちゃんと挨拶ができない。)

ちあきはニヤニヤと笑いながら僕の全身をなめ回すかのように細かくチェックしていた。

「あゆ美、ちょっと私と話しましょう。」

「え、ええ。勉君は?」

「彼には少しここにいてもらうわ。」

そう言って二人は別室へと消えて行った。

(ちょっと、僕は?)

一人場違いな所に取り残されてしまった。


―会議室で

ちあきは出されたお茶を飲みながら真剣な顔でこう言った。

「あゆ美、残念ながら今回の件は諦めてちょうだい。」

「えっ、どうして?」

ちあきにいきなり断られ、絶句した。

「悪いけど、あの子は推薦できないわ。」

「ちあき、ちゃんと理由を説明して。
でないと私納得できない。」

「私はあなたに期待していたのよ。
それなのに…
あの子のどこがすごいの?」

どうやら第一印象で僕は失格になったようだ。

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