ガリ勉くんに愛の手を
基本プログラムが終わった瞬間、僕は大の字になってその場に倒れて込んだ。

(もうダメ!死にそう…)

イッコーはだいぶ離れた場所から体を横にくるくると回転させながら僕の腕の中に転がってきた。

(うわぁっ!)

「びっくりした?ごめんね。」

そのウインクは余計だ。

休憩中は女に戻るらしい。

「勉ちゃん、ひ弱そうに見えて案外根性あるわね。
お姉さん、見直したわ。」

(…………?)

― 休憩中

呼吸もだいぶ落ち着いてまともに話が出来るようになってきた。

僕はイッコーと会った瞬間からある疑問を抱いていた。

それは性別の事ではなく、まったく違うもの…

この際、勇気を出して聞いてみる事にした。

「あの~イッコーさん。
一つ聞いてもいいですか?」

「なあに、彼氏の事以外なら何でもいいわよん。」

(誰もそんな事を聞きたくはない。)

「えーっと、以前大阪の[ミナミ]で働いていた事はありますか?」

その言葉を聞いてイッコーが急に顔をそむけた。

(悪い事を聞いてしまったかな?)

僕はイッコーが彼氏以外にも触れてほしくない事があるのだと思い、すぐに会話を変える事にした。
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