ガリ勉くんに愛の手を

表へ出ると、僕の前を通り過ぎる若者が振り返りながらじっと見ているのに気づいた。

（やっぱり変なのかな…？）

またいつもの癖が出た。

自分を見てみんなが笑っている。

一種のコンプレックスのようなものだ。

そんな僕の姿を見てあゆ美がこう言った。

「勉君、今からあそこの通りを一周歩いてきなさい。」

（え？！）

「怖がっていちゃダメ。
みんなが自分を見てどう思っているか、なんて言っているのか、自分の目と耳で確認してきなさい。
あなたは変わったのよ、自信を持って！」

（あゆ美さん…）

髪型も服装もそして顔も変わった。

でも中身は何も変わっていない。

不安な気持ちのまま、一人で信号を渡り、その場所へと歩いて行く。

渋谷通り…
若者たちが道端に座り込んでしゃべったり、待ち合わせをしたり、歌をうたったり…

それぞれが自分の好きな事をして自由に生きている。

その中へ僕は飛び込んで行こうとしていた。

果たしてみんなは僕を受け入れてくれるのだろうか？

（怖い…）

人の波に紛れ込んでみたものの、いつものようにうつむき加減で目立たないように歩いている。

そんな姿をすれ違いざまに若者たちがジロジロ見ながら何か話している。

じっと耳を澄ませて集中すると…


「ねぇ、あの人超イケメンじゃん。」

「ホント、マジいけてる。」

「かっこいい～！」

「モデルかな？」

・・・・・・・

（僕の事？）

自分の耳を疑った。

（僕が変わった？本当に変わった？！）

心の中で何かが少しずつ変わろうとしているのを感じた。