ガリ勉くんに愛の手を
しばらくして中から大きな物音が聞こえてくる。

「ギャーッ、助けて~!やめて~!」

ドスン、ガチャンッ、
…ズドンッ

「中でプロレスでもやってるんじゃないの?!」

「かも知れないわね。」

イッコーの言葉に苦笑するあゆ美。

激しく鳴り響いていた物音が急に静まり返った。

シ――――ン

(終わったかな?)

ガチャッ。

ゆっくりと扉が開き、中からさっきの男が出て来た。

男の白衣が少し乱れているように見える。

「終わりましたので、どうぞ中へお入りください。」

イッコーとあゆ美は緊張しながら中へ入って行った。

鏡の前に座ったまま顔をうなだれている僕がいる。

恐々近づいてくるあゆ美。

「勉君、大丈夫?」

その呼びかけにゆっくりと顔をあげてコクリとうなずいた。

僕はまだ夢を見ている気分でポカンとしたままあゆ美の顔を見た。

「勉君?私が見える?」

またコクリとうなずく。

「うっそ!信じられない…
ホントに勉ちゃん?!」

横から割り込んできたイッコーが僕を見て感動のあまり抱きついてきた。

「勉ちゃ~ん、なんて男前なの?!
私の心奪って~!」

「ちょ、ちょっと、イッコーさんやめてくださいよ。」

二人のじゃれ合う姿を見ながらあゆ美はほっとした。

(やっぱり、私の目に狂いはなかった。
これで決まりだわ。)


僕はメガネなしで歩くのがどうも落ち着かない。

(目にこんな異物を入れて大丈夫かな~。)

健康上、問題がないか気になって仕方がなかった。
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