ガリ勉くんに愛の手を
塾が終わると近くの駅まで母が迎えに来てくれる。

今の世の中、女や子供だけでなく男でも襲われる事があるらしい。

やっぱり僕も歩いて帰るのは怖い。

改札口を出ると母が手を振っているのが見えた。

「勉~!」

僕は急ぎ足で母の元へ走って行く。

「ママ、お待たせ。」

「お疲れ様。お腹空いたでしょ?
早く帰りましょうね。」

「うん。」

高校生にもなってこんな会話をしているとマザコンだと思われても仕方がない。

別に母にベトベトしている訳ではないが、これが自然の成り行きなんだ。

僕は大苅家の跡取りで一人息子なんだから。

僕の母 幸子 40才 
専業主婦。

もともと父と同じ病院で看護婦をしていたが父と出会い大恋愛の末、結婚、僕を出産した。


今の母の生きがいは僕を医者にする事。

その為にいつもこうやって迎えにも来てくれる。

そんな両親に対して僕は感謝している。

もちろん口応えした事がないし、反抗した事もない。

だって家族のみんなから大事にされ愛されているのだから。

小さい頃からどこへ行くのも両親と一緒。

高校生になってやっと一人で電車に乗るようになった。

初めてかな。外の世界を見たのは……
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