ガリ勉くんに愛の手を
車で自宅まで10分。

玄関に入るとまっ先におばあちゃんが出迎えてくれた。

「勉~、おかえり。
パパも帰ってるから一緒に食事にしましょう。」


祖母 きぬえ 69才

一人息子の父を医者にした事をいつも自慢している。

だから僕も絶対医者にならなくちゃいけなんだ。


リビングに入ると父が食事をせずテーブルに座っている。

僕を待っていてくれたようだ。

「パパ、ただいま。今日は早かったんだね。」


「ああ、たまにはみんなと食事したいしな。」

僕がもっとも尊敬する人


父 大苅幸彦 44才
大学病院の助教授。

もともと東京の病院に勤務していたが、関西の大学病院に引き抜かれ4月から赴任する事になった。

僕たち家族も一緒に東京から大阪に引っ越してきたのだ。

「学校はどうだ、少しは慣れたか?」

父が聞いてきた。

「うん。まあ……」

僕は素気ない返事をした。

「そうか、まあ徐々に慣れてくるだろう。」

父と僕、いつもの会話。

僕は父親ってこんな風に距離を置いてどっしり構えているものだと思っていた。

これが当り前だと…

どこにでもある幸せな家庭…

ただ一つだけ心配な事がある。

それは嫁姑の仲。

おばあちゃんは父と母の結婚をずっと反対していたらしい。

父と名門のお嬢さんとの縁談が進んでいたんだ。

でも父は田舎育ちの娘である母と恋に落ち、僕を身ごもって仕方なく結婚させたみたい。

おばあちゃんは母にはとても冷たく、父や僕の
いないところでいつも母をいじめている。

母は時々、一人で泣いている。

僕は慰めてあげる事もできない。

どうしたらいい?

大好きなおばあちゃんだけど、もう少し母にも優しくして欲しい。

そうすれば本当に仲のいい家族になれるのに……

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