ガリ勉くんに愛の手を
雪が強くなってきた。

アスファルトの上を真っ白い雪が覆い、この都会がまるで白銀の世界に見える、そんな錯覚を起こしている。

その上を一つ、二つ新しい足跡を残しながら歩いてくる。

ゆっくり、ゆっくり。



「そのままカメラを回して。」

ちあきが突然、山崎に指示をした。

「よっしゃ~!」



癖のあるふわふわした髪の上に白く積もる雪。

それを気にも止めず、真っ直ぐに歩いてくる。

彼女は僕の前で立ち止まり、ペタリと座り込んだ。

そして、スーッとその手を僕の顔に伸ばした。

(冷たい!)

頬にかかる冷たい手。

(あ……)

目の前に今一番会いたい人がいる。

(夢?それとも……)

彼女の両手がゆっくりと僕の顔を包み込んだ。

冷たい手がこの傷の痛みを和らげてくれているようなそんな気がした。

ずっと会いたかった彼女がこんなにも近くにいるなんて……

胸の鼓動が激しくときめく。

でも、僕を見つめる彼女の目はどこか寂しげで、必死で何かを伝えようとしていた。

(どうしてそんな悲しい顔をしているの?)

佐奈の目からこらえ切れない涙が溢れ出した。

「ベン……
ごめんな、ごめんな。」

「佐奈さん?」

肩が震え、涙を流しながら何度も何度もただ「ごめん。」を繰り返す佐奈。


「ごめんな、ごめんな……」

何度も、何度も。

(佐奈さん、君が謝らなくていいんだよ。)

心でそうつぶやきながら動かない指先をそっと彼女の頬に近づけた。

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