ガリ勉くんに愛の手を

彼女の頬に流れ落ちる涙を指で拭ぐいとる。

それでも彼女は止めない。

「ごめんな、ごめんな。」

謝るのは僕の方なのに…

（君を救ってあげられなかったこの情けない男に謝る事なんかないよ。）

そんな彼女がどうしようもなく愛おしくて。

僕はたまらず彼女を引き寄せ思いっきり抱きしめた。

「もういいんだ。」

(ベン。)

もう何も言わなくていい。

君がそばにいてくれるだけで、僕は救われる。

今なら素直に言えるよ。

ずっとずっと温ためてきた僕の想いを。

僕は君を……

｢愛してる、佐奈。｣

息ができないくらいに力いっぱい佐奈をこの手で抱きしめた。

「ベン、ベン…！」

もう離さない、絶対に。
ずっと僕のそばにいて……

彼女の体温が僕の冷え切った体を温めてくれた。

白い雪が僕たちを覆い隠すように振り続ける。


―道路の向こう側


ちあきの真剣な眼差しがずっと二人を追い続けていた。

「山ちゃん。撮った？」

｢バッチリ！｣

｢私、こんなグッときたの初めてよ。」

「ああ、俺も。
これは最高のモノになりそうだな。」

「いけるよね？これ。」

「ああ、絶対いける。」

｢それじゃ……

カーット！｣