ガリ勉くんに愛の手を
病院の中へ入ると、ロビーで受付をする人やお金を清算する人、薬をもらう人でごった返していた。

(すごい人だ!)

僕は建物だけでなく、中にいる患者数にも驚いた。

しかし、こんなに広いと父がどこにいるのか探すのに時間がかかろそうだ。

(あそこの[総合案内所]で聞きいてみよう。)

少し緊張しながら、
「あの~こちらの助教授で大苅幸彦に会いたいんですが……」

「はい、少々お待ち下さいませ。」

そう言って電話をかける女性をじっと見ながら、

(やっぱり受付の女性は美人なんだ~。)

つい見とれてしまった。

「お待たせしました。
大苅助教授ですが、本日病院にはいらしておりませんが。」

「え?」

確かに昨日の夜、病院に泊まると連絡があった。

「昨日は通常通り6時頃お帰りになられましたが…」

「そうですか……
わかりました。
どうもありがとうございます。」

丁寧に挨拶をし、病院を出た。

なぜか心がモヤモヤとしている。

(パパ、どこに泊まったんだろう…?)

どうしてウソをついたのか、その時はまだ父に対してなんの疑いも抱かなかった。

大人の事情なんてまったく理解できない。

疑問を残したまま仕方なくそこから図書館に向かう事にした。
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